フィリピン・セブで働く場合は、フィリピンに滞在するためのビザと、外国人として働くための許可を分けて確認する必要があります。

長期雇用で一般的に利用されるのは、フィリピン入国管理局が扱う9Gビザと、フィリピン労働雇用省が扱うAEPです。

そのほか、9Gビザの審査中に取得するPWP、短期就労に利用されるSWP、フィリピン人との結婚を理由に申請できる13Aなどがあります。

観光目的で滞在できることと、フィリピン国内で働けることは同じではありません。給与の支払元、雇用主、仕事内容、契約期間、現在の滞在資格によって、必要な手続きが変わります。

この記事では、フィリピン・セブで働く日本人に向けて、9G、AEP、PWP、SWPの違い、観光滞在中の就労、リモートワーク、結婚後の働き方、転職・退職時の手続きを解説します。

※本記事は2026年6月24日時点で、フィリピン入国管理局、フィリピン労働雇用省、フィリピン政府、日本国外務省などが公表している情報をもとに作成しています。申請要件、受付窓口、必要書類は変更されることがあるため、申請時点の公式情報をご確認ください。

フィリピン・セブで働くために必要なビザと許可

セブで必要になるビザや許可は、働き方や雇用期間によって異なります。

働き方・状況

主に確認する制度

セブの会社で長期間働く

9Gビザ、AEP

9Gビザの審査中に働く

PWP

3〜6か月間の短期就労

SWP

13Aなどの居住ビザを持って働く

Certificate of Exemption

AEPの除外対象となる役員など

Certificate of Exclusion

観光や一時的な商用訪問

ビザなし入国または9A

海外企業向けにリモートワークする

Digital Nomad Visaなど

フィリピンで正規留学する

9F学生ビザ

語学学校などの非学位課程で学ぶ

9AとSSP

フィリピン入国管理局は、9AのTemporary Visitor Visaと、就労を目的とする9GのPre-arranged Employment Visaを別のビザとして扱っています。観光や一時的な商用訪問のための滞在資格は、現地企業へ雇用されるための就労資格ではありません。

フィリピンで長期間雇用される外国人は、一般的に9GビザとAEPの両方を確認します。ただし、13Aなどの居住ビザを持つ人や、一定の会社役員などは、AEPの免除または除外制度の対象になる場合があります。

ビザや許可は、会社が申請手続きを進める場合でも、外国人本人のパスポートや滞在資格に関係します。勤務開始前に、申請しているビザや許可の正式名称と発行状況を確認する必要があります。

9G・AEP・PWP・SWPの違い

9Gビザとは

9Gビザの正式名称は「Pre-arranged Employment Visa」です。

フィリピン入国管理局は、フィリピン国内で給与、賃金、その他の報酬を受け取り、合法的な職業に従事する外国人を9Gビザの対象としています。

9Gビザは、外国人が仕事を探すために単独で取得するビザではありません。原則として、先にフィリピン国内の会社との雇用関係が決まり、雇用する会社がPetitionerとして申請します。

フィリピン入国管理局のFAQでは、9Gビザの期間は雇用契約などに応じて1年、2年または3年と案内されています。必要書類がそろっている場合の処理期間は通常約40日とされていますが、申請件数や審査内容によって変わります。

申請では、書類の事前審査、料金の支払い、ヒアリング、顔写真や指紋などの登録、パスポートへのビザ実装、ACR I-Cardの発行などが行われます。

フィリピン入国管理局の9Gページには料金例も掲載されていますが、同ページには、金額が2014年3月時点のものであり、予告なく変更される場合があると記載されています。申請時には、最新のOrder of Payment Slipと公式領収書に記載された金額を確認する必要があります。

AEPとは

AEPは「Alien Employment Permit」の略で、フィリピン労働雇用省のDOLEが発行する雇用許可です。

9Gが就労を目的としてフィリピンに滞在するためのビザであるのに対し、AEPは外国人をフィリピン国内で雇用するための許可です。

DOLEは、AEPについて、希望する仕事を担当でき、かつ就労する意思のあるフィリピン人がいないことを確認したうえで、外国人に発行する許可と説明しています。

2025年に発行されたDepartment Order No.248-25では、原則として外国人が実際に勤務を開始する前にAEPを取得することや、求人掲載などを通じたLabor Market Testに関する規則が定められています。

2026年6月9日からは、Department Order No.248B-26により、新規・更新、免除・除外、審査、承認、発行などのAEP関連業務がDOLE Central Officeへ集約されています。セブの会社へ勤務する場合も、AEPの提出先や申請方法はDOLEの最新案内に従う必要があります。

PWPとは

PWPは「Provisional Work Permit」の略で、9Gビザの申請が審査中の外国人に発行される暫定的な就労許可です。

フィリピン入国管理局は、PWPを「Pre-arranged Employment Visaの申請が係属中の外国人」に発行する許可と説明しています。

会社が9Gビザを申請する予定であることや、申請書を提出したことだけで、就労資格が自動的に発生するわけではありません。9Gビザの承認前に勤務を開始する場合は、PWPの取得状況を確認する必要があります。

SWPとは

SWPは「Special Work Permit」の略です。

フィリピン入国管理局は、商用SWPについて、フィリピン国内で3〜6か月間、報酬を伴う仕事に従事する外国人を対象としています。

短期プロジェクト、技術指導、コンサルティング、撮影、イベント出演など、期間が限定された業務で利用される制度です。

「6か月未満であれば許可は不要」という制度ではありません。短期間でもフィリピン国内で報酬を伴う仕事を行う場合は、SWPなどの対象になるかを確認する必要があります。

長期的な雇用関係が続く場合は、SWPではなく9GビザとAEPの対象になります。

観光・商用訪問・リモートワークで滞在する場合

日本人は原則30日間ビザなしで入国できる

日本国籍者は、観光または一時的な商用訪問を目的とする場合、原則として30日間までビザなしでフィリピンへ入国できます。

入国には、原則としてフィリピンから出国する航空券と、予定滞在期間に加えて6か月以上有効なパスポートが必要です。

30日を超える一時滞在を予定している日本人は、フィリピン国内で滞在延長を申請するか、渡航前に9Aビザを申請できます。日本居住者向けには、観光または商用目的の9Aについてe-Visaによる申請制度も案内されています。

ただし、ビザなし入国や9Aによる滞在は、フィリピン企業に雇用されるための就労ビザではありません。

観光目的で長期間滞在できることと、フィリピン国内で働けることは別です。9Aを延長しても、9G、AEP、PWPまたはSWPの代わりにはなりません。

商用訪問と現地就労の違い

フィリピン大使館は、30日間のビザなし入国について、観光に加えて、一時的な商用訪問も対象としています。

会議、商談、市場調査、取引先訪問などの一時的な商用活動と、セブの会社へ雇用され、継続して勤務することは異なります。

フィリピン国内の会社から指揮命令を受け、日常的な業務を行う場合は、滞在期間の長さだけでなく、雇用関係と仕事内容をもとに必要な就労資格を確認します。

フィリピンにワーキングホリデービザはない

2026年4月1日時点で、日本とフィリピンの間にワーキングホリデー制度はありません。

日本国外務省が公表しているワーキングホリデー制度の対象32か国・地域に、フィリピンは含まれていません。

そのため、セブで働くための「フィリピン・ワーキングホリデービザ」は存在しません。セブで働く場合は、9G、AEP、PWP、SWP、13Aなどから、雇用形態に該当する制度を確認します。

Digital Nomad Visaについて

フィリピン政府は2025年4月、Executive Order No.86を発令し、フィリピン国外の雇用主や顧客向けにリモートワークを行う外国人を対象とするDigital Nomad Visaの枠組みを設けました。

発給機関はフィリピン外務省のDFAです。申請者には、18歳以上であること、デジタル技術を使用したリモートワークの証明、フィリピン国外からの十分な収入、犯罪歴に関する要件、医療保険などの条件が定められています。また、フィリピン国内で雇用される人は対象外です。

有効なDigital Nomad Visaを持つ外国人は、最長1年間フィリピンに滞在でき、条件を満たす場合は更新制度があります。

Digital Nomad Visaは、フィリピン国外の雇用主や顧客向けのリモートワークを対象とする制度です。セブの現地企業へ雇用される場合は、9GやAEPなどの就労制度を確認します。

フィリピン人と結婚した後のビザと働き方

結婚しただけでは滞在資格は変わらない

フィリピン人と結婚しても、外国人の滞在資格が自動的に変更されるわけではありません。

フィリピン人との婚姻関係を理由に長期滞在する場合は、フィリピン入国管理局へ13Aを申請します。

13Aの正式名称は「Non-Quota Immigrant Visa by Marriage」です。フィリピン人との有効な婚姻関係にある外国人が対象です。

13Aは相互主義に基づく制度で、フィリピン人に永住・移民資格を認めている国の国民が対象になります。フィリピン入国管理局が公表している対象国には日本が含まれています。

最初はProbationaryの13Aを申請する

最初の13A申請では、1年間有効なProbationary Non-Quota Immigrant Visaを申請します。

その後、Probationaryの13Aを持つ外国人は、Permanent Non-Quota Immigrant Visaへの変更申請ができます。

申請では、婚姻証明書、フィリピン人配偶者の身分関係書類、申請書、パスポート、必要に応じたNBI Clearanceなどが求められ、夫婦が参加するヒアリングや生体情報の登録も行われます。

13A保持者とAEP

DOLEのDepartment Order No.248-25では、Permanent、ProbationaryまたはTemporary Resident Visaの保持者は、AEPの取得免除対象に含まれています。

ただし、AEPの免除対象となる外国人については、Certificate of Exemptionを申請する制度があります。13Aを持ってセブの会社へ就職する場合は、勤務開始前にCertificate of Exemptionの手続きを確認します。

婚姻届を提出しただけで、まだ13Aを取得していない人は、Resident Visa保持者としてのAEP免除対象にはなりません。

Balikbayan Privilegeについて

フィリピン人配偶者や元フィリピン人と一緒にフィリピンへ入国する外国人配偶者は、条件を満たす場合、Balikbayan Privilegeの対象になります。

対象者には、最初に最長1年間の滞在が認められます。外国人配偶者が単独で入国する場合は対象とならず、Balikbayanに該当する配偶者または親と一緒に入国する必要があります。

Balikbayan Privilegeは13Aとは異なる入国・滞在制度です。セブの会社へ雇用される場合は、現在の滞在資格とは別に、AEPや免除・除外制度の対象を確認します。

就職・転職・退職・長期滞在で必要な手続き

就職時に確認する内容

セブの会社へ就職する場合は、少なくとも次の内容を確認します。

  • 会社が申請しているビザと許可の正式名称
  • AEPの申請状況
  • 9Gビザの申請状況
  • PWPまたはSWPの発行状況
  • 現在の滞在期限
  • 申請番号と公式領収書
  • パスポートの保管場所
  • ACR I-Cardの申請状況
  • ビザ費用の負担者
  • 退職時の取消しやダウングレードの手続き

会社や代行業者へパスポートを預ける場合は、提出先、使用目的、返却予定日が分かる受領記録を保管します。

転職・退職時のダウングレード

9Gビザは、申請時の雇用主と雇用契約を前提として発行されます。

退職、解雇、会社の閉鎖などにより雇用関係が終了した場合は、9Gビザの取消しや、Temporary VisitorへのDowngradingが必要になることがあります。

フィリピン入国管理局は、Downgradingを、移民・非移民ビザからTemporary VisitorまたはTouristの資格へ戻す手続きとして案内しています。

前の勤務先で取得した9GビザやAEPを、新しい勤務先でそのまま使用できる制度ではありません。転職する場合は、以前の資格の処理と、新しい雇用主による申請を確認します。

ACR I-Card

ACR I-Cardは、フィリピンに滞在する外国人の登録証です。

フィリピン入国管理局は、Temporary Visitor VisaまたはTourist Visaで59日を超えて滞在する外国人を、ACR I-Cardの対象としています。9G、13A、9Fなどのビザ保持者にも、資格に対応するACR I-Cardが発行されます。

ビザとACR I-Cardは別の書類であり、有効期限も必ずしも同じではありません。

Annual Report

登録外国人は、原則として毎年最初の60日以内にAnnual Reportを行います。

2026年のAnnual Reportについても、フィリピン入国管理局は最初の60日以内の申告を求めています。期限を過ぎた場合は、行政上の罰金などの対象になることがあります。

長期滞在後の出国とECC

Temporary Visitor Visaでフィリピンに6か月以上滞在した外国人は、出国前にECC-Aの対象になります。

期限切れまたはダウングレードされた移民・非移民ビザを持つ人や、有効な長期ビザを持ちながらフィリピンを完全に離れる人も、ECC-Aの対象になる場合があります。

有効な移民・非移民ビザとACR I-Cardを持ち、一時的に出国する人については、ECC-Bなど別の出国手続きが適用されます。

TINと税務登録

フィリピンで雇用される外国人には、BIRのTaxpayer Identification Number、通称TINの登録手続きがあります。

BIRは、外国人従業員向けのTIN申請手続きや、PWPまたはAEPを取得する目的でTINが必要な外国人向けの手続きを案内しています。

外国人がフィリピンで働く場合、就労ビザや雇用許可の取得だけで税務登録が完了するわけではありません。雇用主による給与源泉、BIR登録、必要な申告は別の手続きです。

フィリピン・セブの就労ビザに関するよくある質問

セブで働くにはどのビザが必要ですか?

セブの会社へ長期間雇用される場合は、一般的に9GビザとAEPを確認します。

9Gビザの審査中に働く場合はPWP、3〜6か月間の短期就労ではSWPが関係します。13Aなどの居住ビザ保持者は、AEPではなくCertificate of Exemptionの対象になる場合があります。

AEPを取得すれば9Gビザは不要ですか?

AEPと9Gビザは役割が異なります。

AEPはDOLEが発行する雇用許可で、9Gはフィリピン入国管理局が発行する就労目的の滞在資格です。一般的な長期雇用では、両方の手続きを確認します。

9Gビザの申請中は働けますか?

9Gビザの申請中であることだけでは、就労許可になりません。

9Gビザの審査中に勤務を開始する場合は、PWPの対象になります。

観光ビザでセブの会社に勤務できますか?

ビザなし入国や9Aは、観光または一時的な商用訪問のための滞在資格です。

フィリピン企業へ雇用され、継続して勤務するための就労資格ではありません。現地雇用では、9G、AEP、PWP、SWPなどを確認します。

給与を日本の銀行口座で受け取れば、観光滞在のまま働けますか?

給与の振込先だけで、必要な滞在資格や就労許可が決まるわけではありません。

実際の雇用主、顧客、業務を行う場所、仕事内容、契約期間などをもとに、現地雇用なのか、海外企業向けのリモートワークなのかを確認します。

日本企業の仕事をセブでリモートワークできますか?

フィリピン政府は、海外の雇用主や顧客向けに働く外国人を対象とするDigital Nomad Visaの制度を設けています。

フィリピン国内での雇用は対象外です。利用する場合は、DFAが公表する申請条件と受付方法を確認します。

フィリピン人と結婚すれば自由に働けますか?

結婚しただけでは、滞在資格や就労資格は自動的に変更されません。

13AのPermanent、ProbationaryなどのResident Visa保持者はAEP免除の対象ですが、就職する場合はCertificate of Exemptionの手続きを確認します。

フィリピンにワーキングホリデーはありますか?

日本とフィリピンの間にワーキングホリデー制度はありません。

就労ビザの取得にはどのくらいかかりますか?

フィリピン入国管理局のFAQでは、必要書類が完全な場合、9Gビザの処理期間は通常約40日と案内されています。

ただし、AEP、求人掲載、PWP、書類準備などの期間は別に発生し、申請件数や審査内容によって処理期間は変わります。

退職したらすぐにフィリピンを出国する必要がありますか?

必要な対応は、現在のビザの種類、残りの滞在期限、次の雇用主の有無によって異なります。

9Gビザを持っている場合は、取消しやDowngradingが必要になることがあります。

まとめ

フィリピン・セブで働く場合は、滞在資格と雇用許可を分けて確認する必要があります。

長期雇用では9GビザとAEP、9Gビザの審査中はPWP、3〜6か月の短期就労ではSWPが関係します。

フィリピン人と結婚しただけでは、滞在資格や就労資格は自動的に変更されません。13Aを取得したResident Visa保持者はAEP免除の対象になりますが、就職時にはCertificate of Exemptionの手続きを確認します。

また、日本とフィリピンの間にワーキングホリデー制度はありません。海外企業向けにセブでリモートワークする場合は、Digital Nomad Visaの条件を確認します。

勤務開始前には、現在の滞在期限、9G、AEP、PWPまたはSWPの発行状況、ACR I-Card、TIN登録、退職時のビザ処理まで確認することが必要です。